CTA-5033
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LP 「LAS CANCIONISTAS ロシータ・キロガ」
CTA 5033
女性タンゴ歌手にあって、タンゴの裏の感情を歌うことにかけて、キロガは卓越しています。淡々と渋い歌い口で枯淡な境地を演じます。このような歌い方の先駆者です。ほとんどがギター伴奏です。内面的な世界がいつ果てるともなく続く感じです。1899年、ブェノスアイレスのボーカ地区に生まれます。父はスペイン移民で貧しく育ちます。フアン・デ・ディオス・フィリベルトからギターの指導を受けます。最初はフォルクローレを歌いました。1923年から1931年までの活動です。アルゼンチン・ビクター社の電気録音の最初がキロガの「シエンプレ・クリオージャ」だそうです。
このレコードは1984年発売の追悼盤です。キロガの日本での評価はとても高いものがあります。1926年から1930年の15曲。更に追加で1950年録音の「アポロヒヤ・タンゲーラ」を収録しています。折に触れ私的に録音したもののひとつでありましょう。「サン・アントニオ」「デスデ・ピーバ」は四重奏の伴奏、1929年と1930年の録音です。切なく訴える歌唱といい、古風な伴奏といいよき時代の雰囲気です。キロガの息継ぎの際にみせる独特の歌いまわしは絶妙です。
思うに、タンゴ的な歌唱法ということにおいてキロガは最初から最後まで不変でありました。キロガの活躍した時代にあって、このような歌唱は楽団伴奏との調和が確立していなかったように思います。エストレビジョという関係で楽団と歌との関係があり、タンゴ的な歌唱の楽団との関係が模索されていた時期であったように思います。このキロガの先駆的な活動があって後年のタンゴ表現が一定の方向を指示されていたのではないでしょうか。1940年代あたりからタンゴ歌唱は明確に楽団との関係を打ち出します。単に楽団が歌を伴奏という関係ではありません。双方が対旋律関係を保つという関係が定着します。歌は歌詞をもち全体の表現は格段に向上することになりました。